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オリーブオイルは「ヘルシーオイル」の代表格ですが、エネルギー密度は他の食用油と同じく 大さじ1杯(約14 g)で約 119 kcal。 これはご飯茶わん半分弱に匹敵するカロリーです。ドレッシングや仕上げの「追いオイル」を無意識に増やすと、 1日の総摂取エネルギーが簡単にオーバーし、体脂肪の増加につながります。 特に30 代以降は基礎代謝が緩やかに低下するため、同じ量を食べても若い頃より太りやすい点に注意が必要です。
ポイント
オリーブオイルに多いオレイン酸(単価不飽和脂肪酸)は、飽和脂肪酸の多いバターやラードより 血中LDLコレステロール(悪玉)を上げにくい一方、 摂り方によっては期待したほど改善が見られないという報告もあります。 2024年のメタ分析では、オリーブオイル全体ではLDLがほぼ変化しなかった(平均±0.05 mg/dL)一方、 ポリフェノールが豊富な「高ポリフェノールオリーブオイル(HPOO)」を多く摂ったグループでのみ LDLが‐4.28 mg/dL低下していました。つまり、 精製度が高い(=ポリフェノールが少ない)オイルを大量に摂ってもコレステロール改善効果は期待薄。 しかも摂取エネルギーは増えるため、コレステロール対策で使うならエクストラバージンなど品質を重視し、量は控えめが基本です。
ポイント
オリーブオイルでの食物アレルギーやアナフィラキシーは極めてまれですが、 報告例は存在します。また、長期間の外用で接触性皮膚炎を起こしたケースも報告されています。 とくにアトピーや既往歴のある人がスキンケア目的で直接肌に塗る場合は、パッチテストを行い、 異常があればすぐ中止しましょう。食品として摂取するときも、口腔内のかゆみやじんましんなどが出た場合は医療機関を受診してください。
“ヘルシー”なイメージに惑わされず、「量を決めて、質を選び、体調を観察する」——これがオリーブオイルとうまく付き合うコツです。
エクストラバージンオリーブオイル(EVOO)に豊富なポリフェノールやビタミンEは、熱にさらされると徐々に減少します。 最新のレビューでは、120 °Cで15〜60分加熱すると総ポリフェノール量が約40%、170 °Cでは最大75%まで低下 したという結果が報告されています。 また家庭料理レベルの加熱(248 °F=約120 °C)でも、 抗酸化成分が40%失われ、338 °F(約170 °C)では75%失われるという理化学データが紹介されています。
とはいえ、失われるのは“量”であって“機能”がゼロになるわけではありません。 EU が定める「オリーブオイル健康表示基準」に必要なポリフェノール量は依然としてクリアするという指摘もあり、 適温調理なら十分な抗酸化力を保持できます。 さらに、ポリフェノールの一部は調理中に食材へ移行し、野菜などの抗酸化力を高める効果も確認されています。
オイルが煙を上げ始める「スモークポイント」を超えると、劣化が急速に進み、発煙物質や有害成分が増えます。
したがって、“中温まで”なら EVOO でも安全かつ栄養も保持できます。ただし、ポリフェノールやフレーバーの損失を最小限にしたい場合は、下記の温度管理がおすすめです。
調理法 | 目安温度 | オイルの選択ポイント |
---|---|---|
ソテー・炒め物 | 120–150 °C | 風味を生かすなら EVOO 少量 |
低温揚げ(フリット) | 160–170 °C | ポリフェノール保持を優先し、揚げ時間を短く |
高温揚げ・長時間揚げ | 180 °C 以上 | 価格と風味のバランスで、精製(ピュア/ライト)オリーブオイルも検討 |
温度計で170 °Cを目安にキープし、連続加熱は避けて使い切る量だけを鍋に入れると劣化を抑えられます。 香りを楽しみたい仕上げ用・サラダ用は“非加熱”で摂るのがベストです。
次のブロックでは、オリーブオイルの使用時の注意点(揚げ物適性やスキンケア利用のリスク)について掘り下げます。
エクストラバージンオリーブオイル(以下 EVOO)は、芳醇な香りとポリフェノールが魅力ですが、 深い揚げ物には向きません。理由は大きく3つあります。
理由 | 詳細 | 回避策 |
---|---|---|
スモークポイントのバラつき | EVOO の発煙温度は品種・製法で 180 °C 前後まで下がることも。190 °C 以上で揚げると急速に酸化・劣化し、煙や焦げ臭が出る。 | 低温(160‒170 °C)の「さっと揚げ」や炒め物に限定する。 |
風味とポリフェノールの損失 | 高温で長時間加熱すると、EVOO ならではの青い香りや抗酸化成分が大きく減少。コストパフォーマンスが悪い。 | 揚げ物には精製オリーブオイル(ピュア/ライト)や他の耐熱油を使用し、仕上げに EVOO をひと回し。 |
フィルター詰まりと廃油コスト | 残留ポリフェノールが加熱で固まりやすく、天ぷら鍋の油こし紙や業務用フィルターを早く詰まらせる。 | 使い切り量だけを鍋に入れ、再利用は最小限に。 |
ワンポイント
フライパンひと口カツなど「中温・短時間揚げ」なら EVOO でもおいしく仕上がりますが、たっぷりの油で 180 °C 以上に保つ本格フライは別の油を選ぶ方が経済的かつ安全です。
「自然派スキンケア」として食用オリーブオイルを直接塗る美容法が SNS で話題ですが、 化粧品グレードと食用グレードは管理基準が異なります。特に気をつけたいのは次の4点。
ワンポイント安全ガイド
- スキンケア用途は精製度の高い「化粧品用オリーブスクワラン」などを選ぶ。
- パッチテスト(腕の内側で 48 時間)で赤み・かゆみがないか確認。
- 酸化しやすいので遮光瓶に小分けし、1か月以内に使い切る。
次のブロックでは、オリーブオイルの保存方法と賞味期限について解説します。
開封後のオリーブオイルは、光・空気・熱で酸化が進むと“過酸化脂質”が増加します。これが進むと、
特に 30 代以上は代謝が落ち、体がダメージをリセットしにくいので、「香りがおかしい」「ピリピリした辛味が強すぎる」と感じたら即廃棄が鉄則です。
チェックポイント
- 香り:フレッシュな青い香り → 古新聞・絵の具のようなにおいなら NG
- 味:心地よい辛味 → 刺すような刺激と渋みが残るなら NG
- 色:緑〜黄金色 → 透明感がなく濁ってきたら酸化が進行
やること | なぜ? | コツ |
---|---|---|
暗所で保管 | 紫外線は酸化スピードを 10 倍に加速。 | キッチンの下段戸棚がベスト。窓辺・コンロ横は厳禁。 |
常温(15〜20 °C)キープ | 冷蔵庫(4 °C付近)では白濁・凝固で風味低下、高温(25 °C超)では酸化亢進。 | 夏場は涼しい食品庫、冬場は暖房の影響を受けにくい戸棚へ。 |
開封後は1〜2か月で使い切る | 酸素に触れる量が増え、一気に酸化が進む。 | 500 mLを年1本より、250 mLをこまめに買う。 |
注ぎ口を小さくする | 空気が入りにくくなる。 | オイルスプレーやポアラー付きボトルを活用。 |
濃色ガラス or 缶を選ぶ | 遮光率が高く、光劣化を防ぐ。 | 透明瓶しかないときはアルミホイルで巻く裏ワザも◎。 |
賞味期限の目安
- 未開封:製造から 18〜24 か月(ボトル表示を確認)
- 開封後:風味と機能性を重視するなら 2か月以内
- サラダ仕上げなど非加熱で使う分は“開封後最初の1か月”がベストタイミング
次のブロックでは、オリーブオイルの摂取量と健康への影響についてご紹介します。
カジュアル TIP
ご飯・パン・おやつを控えた「糖質オフ」でも、オイルを増やしすぎるとカロリー過多に。
“オイルで満足感を+、でもトータルは −” が成功のコツ。
計量スプーンをキッチンに常備すると「ちょい足し」の量が可視化され、無意識オーバーを防げます。
次のブロックでは、オリーブオイルの選び方と偽装問題をわかりやすく解説します。
プチ TIP
スーパーで迷ったら「遮光容器」「250 mL」の三拍子で選ぶとハズレが少ないです。
対策
- 産地・搾油地が一致した「シングルオリジン」を選ぶ
- 国産または輸送距離が短いオイル(例:オーストラリア、西海岸産)を検討
偽装のタイプ | 具体例 | 消費者へのダメージ |
---|---|---|
品質偽装 | ピュアオイルを“エクストラバージン”と表示 | 抗酸化成分が少なく、価格に見合わない |
産地偽装 | トルコ産を“イタリア産”と表記 | 期待した風味が得られず、農薬基準が異なる場合も |
混油偽装 | ひまわり油やパーム油をブレンド | アレルギー表示義務違反、LDL上昇リスク |
年月日偽装 | 旧在庫を新ラベルで再販売 | 酸化が進み、胃腸障害や酸化 LDL の増加要因に |
2023 年のEuropol/Interpol「Operation OPSON X」では、欧州で約 5,000 t の“エクストラバージン偽装オイル”が押収され、健康被害の可能性が指摘されました【欧州警察機構, 2024】。
アメリカ FDA も 2022 年に「オリーブオイルの誤表示は Economically Motivated Adulteration(経済的動機による混入)に該当」と警告を発出しています。
セルフ防衛の3カ条
- 信頼できる輸入業者・ブランドを固定買い
- ロット番号/ボトル番号が印刷された追跡可能品を選ぶ
- 価格が安すぎる“プレミアムEV”は疑う(相場より3割以上安い場合は要注意)
A. “鮮度・量・温度”の3点セットを守ること。
チェック項目 | ベストプラクティス | 理由・メリット |
---|---|---|
鮮度 | 収穫年&酸度表示がある 250 mL 遮光瓶を 3 か月で使い切る | 抗酸化ポリフェノールと青い香味がキープできる |
量 | 1 日 大さじ 1〜2 杯(14–28 g)に収める | カロリー過多を防ぎながら脂溶性栄養を確保 |
温度 | 炒め物は 140 °C 前後、揚げ物は 160 °C、サラダは非加熱 | 170 °C 超で失われるビタミン E・ポリフェノールを温存 |
ワンポイント
仕上げに“追いオリーブオイル”をひと回しすると、加熱ロスを補いながら風味アップ。
同時に野菜の β-カロテンやリコピンなど脂溶性ビタミンの吸収率も向上します。
A. 少量(小さじ 1〜2)を毎日の食事に組み込むと、腸の潤滑油として働きやすい。
便秘リセット簡単レシピ
スムージー - バナナ 1/2 本、ほうれん草 30 g、キウイ 1 個、無調整豆乳 150 mL、EVOO 小さじ 1 をブレンダーで 10 秒。
食物繊維+有機酸+オリーブオイル の相乗効果で翌朝スッキリ。