自家製オリーブオイルの魅力と基本知識
 
オリーブオイルとは?その歴史と特徴
オリーブオイルは、オリーブの果実を搾って得られる果実油。ぶどうを絞ったジュースに近い“生鮮油”なので、 香り・味・鮮度がダイレクトに品質を左右します。
地中海では数千年前から食用・薬用・灯りとして使われ、日本では明治期に導入、 1908年に小豆島の試験栽培が成功して産業化が進みました。瀬戸内の温暖・少雨の気候はオリーブに相性がよく、国内でも品質の高いオイルが生まれています。
風味の指標
	- アロマ:青葉、トマトの葉、青りんご、アーモンドなど。品種・熟度で変化。
- 辛み・苦み:ポリフェノール由来。若い果実ほどしっかり。新鮮さのサイン。
- 酸度(遊離脂肪酸):搾油品質の客観値。低いほど良質(エキストラバージンは0.8%以下)。
健康面の要点
	- オレイン酸が主成分で酸化に強く、日常の加熱調理にも使いやすい。
- ビタミンE、ポリフェノールを含み、酸化ストレス対策に寄与(ただし加熱で減るので、仕上げ使いも◎)。
ポイント:オリーブオイルは“油”というより果汁の延長。コーヒー豆や日本酒と同じで、収穫年(新油)と保管状態が味を左右します。
オリーブオイルの種類と選び方
国際規格の主な区分
	- エキストラバージン(EVOO):化学精製なし。官能欠陥なし・酸度0.8%以下。香りと味の魅力が主役。
- バージン:EVOOにわずかに及ばない品質。国内流通は少なめ。
- 精製オリーブオイル:精製して癖を除いた油。一般に風味は穏やか。
- オリーブポマースオイル:搾りかす由来。家庭の“自家製”・“作り方”文脈では対象外。
ラベルの見方(買う前のチェックリスト)
	- 収穫年・ボトリング年月:新しいほどフレッシュ。
- 容器:遮光瓶/缶が鉄板。透明瓶は避ける(光で劣化)。
- 原産地・品種・単一農園(シングルエステート)表記:味の再現性とトレーサビリティが取りやすい。
- 風味のヒント:ラベルに「青い香り/辛み・苦みあり」などの記述があれば、サラダ向き or 料理向きの当たりをつけやすい。
- 容量:家庭なら250〜500mlを回転良く使い切るのが鮮度管理に◎。
用途別の選び方
	- 仕上げ・サラダ用:青い香りが立つEVOO(早摘み傾向・ポリフェノール高め)。
- 日常の加熱:マイルドなEVOOまたは精製オイルとのブレンド。中火までが基本、仕上げ追いオイルで香りを補強。
- パン&チーズ:ナッティや熟果調のEVOO。塩ひとつまみで甘みが開く。
迷ったら:“新しい×遮光×小容量”を選ぶ。まずは1本は青い辛苦系(仕上げ)、1本はマイルド系(加熱)の2本持ちが使い分けしやすい。
要点まとめ
	- オリーブオイルは“果実油”。鮮度・香り・酸度が命。
- 自家製や“作り方”に興味があるなら、まず良いEVOOを味わって基準をつくるのが近道。
- 購入時は収穫年・遮光容器・小容量を優先。仕上げ用と加熱用の2本体制が失敗しないコツ。
自家製オリーブオイルの作り方
 
必要な材料と道具の準備
材料
	- 収穫したてのオリーブ(青〜半熟中心がおすすめ):目安10kgで約1〜2Lのオイル
 ※極小バッチなら2〜3kgでもOK(歩留まりは少ない)
道具(あるほど良い順)
	- クラッシャー(ミンサー/フードプロセッサー):果実をペースト化
- マラキサー代用:ボウル+スパチュラ(30〜45分やさしく練る)
- 圧搾器(スクリュープレス・油圧プレス)
 ※なければ厚手の布+重しで代用可
- ろ過用:チーズクロス、メッシュ袋、コーヒーフィルター
- 分離用:じょうご、透明ボトル(静置分離)、可能なら遠心分離機
- 温度計:ペースト温度を25〜27℃に管理
- 遮光瓶:小容量(250〜500ml)を複数用意
代替案:本格設備がなくても超小ロット手しぼりで十分楽しめます。まずは“香りの学習体験”としてトライ。
オリーブの収穫と前処理
	- 収穫タイミング:青い香り重視は早摘み、まろやかさ重視は半熟〜完熟をミックス
- スピード命:収穫〜粉砕は24時間以内が理想(酸化・発酵を防ぐ)
- 洗浄・選果:葉・枝・傷果・過熟果を除去し、やさしく洗って水切り
- 脱核不要:一般に果肉・種ごと粉砕(ただし種の砕けすぎは渋み増)
ミニTips:虫食い・落下果はオフフレーバーの原因。思い切って外す。
搾油のプロセスと注意点
手順概要(5ステップ)
	- 粉砕(クラッシング)
 乾いた容器でオリーブをペースト状に。フードプロセッサーは回しすぎ注意(熱で香りが飛ぶ)。
 目標:なめらかな緑ペースト。粗いと油が出にくい。
- マラキシング(練り)30〜45分
 ペースト全体を25〜27℃に保ち、ゆっくり混和。微小油滴が結合して分離しやすくなる。
 NG例:低温=歩留まり低下/高温=香り・ポリフェノール劣化。
 ※ボウルを湯せん or 氷水で微調整
- 圧搾(プレス)
 ペーストをチーズクロスで包み、ゆっくり圧をかける。
 代用:厚手布+重しでじわじわ圧をかける。
 注意:一気に強圧は雑味・渋みの原因。
- 一次分離(静置 or 遠心)
 出てきた液体(オイル+植物水)を静置し、油層を上からデカンテーション。
 ※遠心分離機があれば効率UP。水分残りは劣化・濁りの原因。
- 粗ろ過 → 仕上げろ過
 チーズクロスやコーヒーフィルターで微細な果肉・水分を除去。
 無濾過派:フレッシュ感は魅力だが沈殿・劣化が早いので小瓶で早めに使い切る。
充填・保管
	- 満量充填:遮光小瓶にヘッドスペース最小で充填
- 保管:冷暗所で保管、開封後は1〜2か月以内に使い切る
家庭搾油のリアル(よくあるQ&A)
	- 量がほとんど取れない…
- 正常です。小ロットは歩留まりが低いのが前提。まずは香り体験を楽しむ。
- 苦い・辛い
- 早摘み・種の砕けすぎ・過度圧搾が一因。温度・時間・圧の調整で改善。
- 濁りや変な香り
- 水分残り・衛生不良・処理遅延が原因。スピードと清潔を最優先に。
 
要点まとめ
	- 工程は粉砕→練り→圧搾→分離→ろ過の5ステップ。
- 温度(25〜27℃)・清潔・スピードが品質の三大要素。
- 小ロットは歩留まりより香り体験重視。遮光小瓶で早めに使い切るのが正解。
自家製オリーブオイルの活用法とレシピ
 
オリーブオイルを使った簡単レシピ
① 新玉ねぎとトマトの“そのまま”サラダ
	- 新玉ねぎスライス … 1/2個分(薄切り・水にさらさない)
- トマト … 1個(角切り)
- エキストラバージンオリーブオイル(EVOO) … 大さじ2
- 塩 … ひとつまみ/レモン汁 … 小さじ1/黒こしょう … 少々
作り方:器に具材を重ね、塩→EVOO→レモン→黒こしょうの順にかけて軽く和えるだけ。
Point:塩を先に触れさせると野菜の甘みが立ち、EVOOの青い香りが引き立つ。
② オイルで“蒸す”白身魚の包み焼き
	- 白身魚(鯛・タラ等) … 2切れ
- 塩 … 小さじ1/3/白ワイン … 大さじ1
- EVOO … 大さじ2/にんにくスライス … 1片分/ハーブ(タイム等) … 適量
作り方:クッキングシートに材料をのせ、塩・白ワイン・EVOOを回しかけ包む。
フライパンで弱め中火8〜10分蒸し焼き。仕上げに追いEVOO少々。
Point:“中火まで”が基本。湯気が出てきたら温度キープ。
③ 季節野菜のアーリオ・オーリオ(にんにくオイル炒め)
	- 好みの野菜(アスパラ・ブロッコリー・舞茸など) … 250g
- EVOO … 大さじ2/にんにく … 1片(芽を除き潰す)
- 塩 … 小さじ1/4/唐辛子 … 少々
作り方:冷たいフライパンにEVOOとにんにくを入れ弱火で香りを出す。
野菜と塩・唐辛子を加え、中火未満でシャキッと火入れ。仕上げに追いEVOO。
Point:にんにくを色づかせ過ぎない=苦味回避。
④ 5分で完成:オイルと塩だけの“神トースト”
	- バゲット or トースト … 2枚
- EVOO … 各小さじ2/塩 … ひとつまみ/好みで胡椒
作り方:焼きたてパンにEVOO→塩の順で。好みで胡椒。
Point:塩はフレークソルトだと風味のコントラストが強く、オイルの甘みが際立つ。
⑤ レモンEVOOドレッシング(作り置き小瓶)
	- EVOO … 大さじ4/レモン汁 … 大さじ2
- 塩 … 小さじ1/3/はちみつ … 小さじ1/黒こしょう … 少々
- 粒マスタード … 小さじ1(お好みで)
作り方:小瓶で振って乳化させるだけ。冷蔵で3〜4日。使うたび振る。
用途:サラダ、カルパッチョ、温野菜、冷製パスタ。
シーン別“使い分け”早見表
	- 仕上げ:青い香り・辛味ありのEVOO(サラダ・刺身・スープ)
- 加熱:マイルドEVOO or 精製オイル(ソテー・炒め物)
- パン・チーズ:ナッティ/熟果調のEVOO(塩ひとつまみ)
 
オリーブオイルの保存方法と注意点
	- 光を避ける:遮光瓶 or 缶がベスト。透明瓶は速やかに暗所へ。
- 温度帯:15〜20℃目安の冷暗所。高温は劣化促進、低温で白濁しても常温で戻れば品質問題なし。
- 酸素を避ける:小瓶に満量充填。開封後は1〜2か月で使い切り。
- におい移り防止:スパイスや強い香りの食品のそばに置かない。
- 加熱の目安:煙が出たら温度過多のサイン。火を弱める or 新しい油を足して温度調整。
要点まとめ
	- EVOOは生でも加熱でもOK。仕上げ用と加熱用で使い分けると失敗しない。
- 保存は光・熱・酸素を避けるのが3原則。小瓶運用が吉。
- フレーバーオイルは衛生第一。短期消費・少量仕込みが安心。