エクストラバージンオリーブオイルとは何か
フレッシュなオリーブの実を機械的な方法だけでしぼった、いわば「オリーブ果汁のオイル版」。香り・味・栄養がもっとも充実しているトップ等級で、ラベルではしばしば EVOO(Extra Virgin Olive Oil) と表記されます。簡単にいうと――エクストラバージンとは“混じり気なし&フレッシュな一番しぼり”のことです。
エクストラバージンオリーブオイルの定義
- 化学・官能の基準を満たす最高グレード
- 遊離脂肪酸(酸度)が0.8%以下(オレイン酸換算)
→ 収穫〜搾油までの鮮度管理が良い証拠。
- 官能検査で欠陥がないこと&フルーティーさが感じられること
→ “青い草・トマト・アーモンド”のような心地よい香味が基準。
- 製法の条件
- 溶剤・精製なし:化学的な精製や脱臭は一切不可。
- 低温抽出(一般に27℃以下):香りやポリフェノールを守るため、熱をかけすぎない。
- 混ぜ物禁止
- 他油脂や精製油とのブレンドは不可。100%オリーブ果実由来が原則。
要は「味も香りも健全で、混ぜずに“低温でやさしくしぼったオリーブのジュース”」。だからサラダにひとかけするだけでも風味の差がハッキリ出ます。
エクストラバージンオリーブオイルの製造方法と原材料
- 収穫(手摘み or 機械)
早摘みは香りが青く、苦味・辛味(ポリフェノール由来)がしっかり。完熟寄りはまろやか。傷みを避けるため短時間で搾油所へ。
- 洗浄・選別
葉や小枝を取り除き、実を洗って異物を除去。原料の健全さが品質の土台。
- 破砕(クラッシング)
ハンマーミル等で実を砕き、“オリーブペースト”に。
- 練り(マラキシング)
低温でゆっくり攪拌し、微細な油滴を集める。香りを飛ばさないのがコツ。
- 分離(デカンター遠心分離→縦型遠心)
ペーストから油・水・固形分を分け、オイルを取り出す。
- 仕上げ(ろ過 or 自然沈殿)
うっすら濁りを残す“ノンフィルター”もあるが、長期保存や安定性を重視するならろ過。
- 充填・保管
遮光瓶・窒素充填・低温保管で「光・酸素・熱」から守る。ここまで徹底して“フレッシュ感”をキープ。
原材料は“健全なオリーブの果実のみ”。 種から搾る“種子油”ではなく、果肉主体の果実油です。品種や産地、収穫タイミングの違いで香味がガラッと変わるので、ワイン感覚で選ぶ楽しさもあります。
エクストラバージンオリーブオイルと他のオリーブオイルの違い
「エクストラバージンとは?」を一歩進めて、ラベルで迷わないように“ここが違う”をサクッと整理します。
エクストラバージンオリーブオイルとピュアオリーブオイルの違い
ざっくり結論:エクストラバージン(EVOO)は“果実をしぼっただけのフレッシュジュース”。ピュア(または単に“オリーブオイル”表記)は精製油がメインで、そこに少量のバージン油をブレンドして香りを整えたもの。
- 製法
- EVOO:機械的に搾油のみ。溶剤・精製なし。
- ピュア:精製オリーブオイルがベース+バージンオイルを少量ブレンド。
- 香り・味
- EVOO:青い草、トマト、アーモンドのようなフルーティーな香味。
- ピュア:ほぼ無臭〜マイルドで主張は控えめ。
- 酸度
- EVOO:0.8%以下
- ピュア:精製で数値は低いが官能基準は不要。
- 加熱適性(煙点)
- EVOO:190〜210℃前後。ソテー・揚げ焼きまでOK。
- ピュア:220〜240℃。高温フライでも扱いやすい。
- 向いている使い方
- EVOO:サラダ・カルパッチョ・仕上げの“追いオイル”。
- ピュア:大皿の揚げ物や普段使い。
迷ったら:生食はEVOO、高温はピュアという使い分けがラク。
エクストラバージンオリーブオイルとバージンオリーブオイルの等級
“バージン系”の中にもグレードがあります。主に酸度と官能基準で決まります。
区分 |
ざっくり定義 |
酸度(オレイン酸換算) |
官能基準 |
風味の傾向 |
用途の目安 |
エクストラバージン(EVOO) |
最高グレード |
≦0.8% |
欠陥なし+フルーティー感あり |
香り高く、苦味・辛味がバランス良い |
生食・仕上げ・軽い加熱 |
バージン |
EVOO未満 |
≦2.0% |
軽微な欠陥は許容 |
やや素朴 |
加熱中心に幅広く |
ランパンテ |
食用不可 |
>2.0% |
欠陥あり |
不快臭・劣化 |
精製原料として使用 |
ピュア(精製ブレンド) |
精製油+少量のバージン油 |
— |
官能基準なし |
ほぼ無臭でクセがない |
高温調理・大量調理に◎ |
まとめ
香り・栄養・個性 → EVOO。
高温・価格重視 → ピュア。
中庸・加熱中心 → バージン。
エクストラバージンオリーブオイルの健康効果
香りだけじゃなく、中身の栄養がしっかりしているのがEVOOの強み。ポイントは「脂肪酸の質」と「微量成分(ポリフェノールなど)」です。
エクストラバージンオリーブオイルの栄養成分
- 脂肪酸バランス(目安)
- オレイン酸(MUFA):70〜80% → 酸化に強く、日常使いしやすい安定性。
- 飽和脂肪酸:10〜15%
- 多価不飽和脂肪酸(リノール酸/α-リノレン酸):5〜10%
- 抗酸化・機能性成分
- ポリフェノール(ヒドロキシチロソール、チロソール、オレオカンタール、オレウロピンなど):100〜500 mg/kgが目安。辛味・喉にくるピリッはオレオカンタール由来。
- ビタミンE(α-トコフェロール):約12〜20 mg/100 g
- スクアレン:約200〜700 mg/100 g
- フィトステロール:約100〜200 mg/100 g
- 色素(クロロフィル/カロテノイド):抗酸化と色合いに関与
- カロリー:約9 kcal/1 g(大さじ1=約14 gで約126 kcal)
ざっくり言うと、“良質な一価不飽和脂肪+抗酸化ポリフェノール”がEVOOの健康価値の核です。
エクストラバージンオリーブオイルの健康への影響
- 心血管サポート:オレイン酸とポリフェノールが酸化LDLを抑えやすく、血管機能のサポートが期待される。
- 抗炎症サポート:オレオカンタールなどが微小炎症にブレーキをかける働きを示唆。
- 血糖・体重マネジメント:満腹感持続と食後血糖の急上昇をゆるやかに。ただし置き換え前提。
- 腸・マイクロバイオーム:一部ポリフェノールは腸内細菌の多様性サポートに。オレイン酸は便通改善にも寄与。
- 肌・美容:ビタミンEやスクアレンが酸化ストレス対策やうるおい維持にプラス。
- 加熱時の安定性:MUFA多めで熱安定性は高いが、長時間強火は香り・成分が減りやすいので追いオイル推奨。
摂取の目安
- 大さじ1〜2/日(14〜28 g)を他の油から置き換える。
- 体重管理中はまずは大さじ1から。
注意ポイント
- カロリーは高いので入れすぎ注意。
- 胃もたれや軟便が出る場合は量を減らす。
- 持病や服薬中の方は医師・管理栄養士に相談。
このブロックの要点
・EVOOは良質なMUFA+抗酸化ポリフェノールが強み。
・心血管・抗炎症・血糖安定・腸・美容にプラスが見込める。
・置き換えで適量+生か中火+追いオイルが活かし方のコツ。
エクストラバージンオリーブオイルの使用方法
「香りは生で、コクは中火で、最後に“追いオイル”」が基本。失敗しないコツをサクッと押さえましょう。
料理におけるエクストラバージンオリーブオイルの使い方
- 生かけ(風味を最大化)
- サラダ/カルパッチョ/温野菜/スープの仕上げに小さじ1〜2。
- 酸(レモン・酢)×塩と合わせると味が締まる。
- ドレッシング黄金比:オイル3:酸1+塩(全体の1%)。
- 香り出しの中火ソテー
- フライパンを中火で温め→オイルIN→“ゆらぎ”が出たら具材投入。
- ニンニクは弱火で香り出し→焦がさない。
- 目安温度:160〜180℃。
- ロースト&グリル前のコーティング
- 野菜・肉・魚に重量の2〜3%のEVOOを和えてからオーブンへ。
- ジューシーさと焼き色アップ。
- マリネ(下味)
- EVOO:酸=2:1をベースに塩・ハーブで。
- 魚は15〜30分、鶏胸は30〜60分冷蔵でしっとり。
- 乳化ソース・パスタ
- パスタはゆで汁+EVOOで“乳化”させるとツヤ感アップ。
- 仕上げに追いEVOOで香り復活。
- 浅い揚げ焼き(シャローフライ)
- 油深さ1〜2cm、170〜180℃で短時間。
- 仕上げに追いオイルで風味補強。
ワンポイント:塩は“後半”に加えると水分が出すぎず、香りも立ちやすい。
日常生活への取り入れ方
- 置き換えルール:バター/他油をEVOOにスイッチ。まずは大さじ1/日から。
- 朝のルーティン:トーストにEVOO+塩、ヨーグルトに小さじ1、スムージーに小さじ1。
- 昼の時短:コンビニサラダやチキンにひと回し。既製ドレッシングより安心。
- 夜の仕上げ:グリル野菜、スープ、ピザに追いオイル。
- 週末の作り置き:EVOO漬け(ツナ・チーズ・ドライトマト)を常備。即一品に。
- 保存の工夫:遮光瓶+涼しい場所で。開封後2〜3か月以内に使い切り。
このブロックの要点
・生かけ+中火+追いオイルで香りと栄養を最大化。
・日常は置き換え+小分け運用で続けやすい。
・塩・酸・ハーブの三位一体で味が決まる。
エクストラバージンオリーブオイルと食材の相性
“青くて辛味のあるEVOO”と“まろやかで甘みのあるEVOO”で、合う食材が少し変わります。選び方のコツだけ押さえれば、組み合わせは無限大です。
おすすめの食材との組み合わせ
- 早摘み(青い/辛味あり):トマト、ルッコラ、柑橘、白身魚、豆腐、刺身
- 完熟寄り(まろやか/甘み):卵、ポテト、きのこ、鶏肉、サーモン、チーズ
和風コンビ
- 醤油 × EVOO:刺身・冷奴・アボカドに。しょうゆ2:オイル1で旨みドレッシング。
- 柑橘 × EVOO:焼き魚や冷やし麺に香りをプラス。
- 味噌 × EVOO:きゅうりや蒸し野菜に。塩分控えめでもコク◎。
- 出汁 × EVOO:お吸い物や味噌汁の仕上げ一滴で余韻。
洋風コンビ
- モッツァレラ × トマト/いちじく × EVOO:甘みと酸味をフレッシュに。
- きのこ × ローズマリー × EVOO:香りの相乗効果。
- じゃがいも/かぼちゃ × EVOO:外カリ中ホク。
- チョコ/バニラアイス × EVOO+塩:甘じょっぱさ+香りで大人デザート。
迷ったら「酸味+塩+EVOO」の三点セットが万能です。
エクストラバージンオリーブオイルを使ったレシピ
- 鯛の和風カルパッチョ(5分)
鯛を並べ塩→醤油+レモン+EVOOを回しかけ、大葉とごまを散らす。
早摘みEVOOで喉ピリをアクセントに。
- トマト&いちじくのカプレーゼ(7分)
トマト・いちじく・モッツァレラを重ね、塩こしょう→EVOO→バルサミコ。
完熟寄りEVOOでまろやかに。
- きのこのEVOOマリネ(10分+冷却)
きのこをEVOOとにんにくで炒め、塩→酢とハーブ→冷却。冷蔵3日保存OK。
- そうめんのオリーブつゆ(5分)
めんつゆ+水+EVOOで乳化→具材とそうめんに。比率はつゆ2:EVOO1。
- 新じゃがのローズマリーロースト(25分)
EVOOと塩で和えて200℃で20分。仕上げに追いオイル。
- 卵かけ“オイル”ご飯(3分)
ご飯+卵+醤油+EVOO。完熟はコク、青いタイプは香りが際立つ。
- バニラアイスのEVOO&塩(即席)
アイスにEVOOと塩をかける。早摘みEVOOの苦味が◎。
このブロックの要点
・酸味+塩+EVOOは万能黄金比。
・早摘み=生・魚・フルーツ/完熟=卵・芋・きのこ・肉が目安。
・仕上げの追いオイルで最終調整。
エクストラバージンオリーブオイルに関するQ&A
よくある質問とその回答
- 「エクストラバージンとは」結局なにが“エクストラ”?
- 収穫したオリーブの実を機械的にしぼっただけで、欠陥風味がなくフルーティーと評価された最上位グレードのこと。酸度(遊離脂肪酸)が0.8%以下という化学基準もクリア。
- 酸度0.8%って“酸っぱい”って意味?
- いいえ。酸っぱさではなく、油中の遊離脂肪酸の割合。鮮度管理の良し悪しの目安。
- 「コールドプレス」「コールド抽出」って違うの?
- どちらも低温での機械抽出を指す用語。実際は多くが遠心分離機で27℃以下を目安に抽出(香り・ポリフェノールを守るため)。
- ノンフィルター(無ろ過)は良いの?保存は?
- 搾りたて感があり香りはリッチ。一方で澱が酸化の起点になりやすいので、早めに使い切る(開封後1〜2か月)&低温暗所。長期保存ならろ過タイプが安定。
- 色が“濃い/緑”ほど高品質?
- 色は品質の指標ではありません。 品種・収穫時期・ろ過の有無で変化。香り・味・鮮度表示を重視。
- 苦味・喉のピリッは不良?
- 多くはポリフェノール由来の健全な辛味(オレオカンタールなど)。ただし段ボール臭/ろう臭などは劣化サイン。
- 加熱に使っても大丈夫?煙点は?
- EVOOの煙点は概ね190〜210℃。中火のソテーや揚げ焼きはOK。長時間の強火は香り・機能性が落ちやすいので、仕上げに“追いオイル”がコツ。
- 1日にどれくらい摂ればいい?
- 目安は大さじ1〜2(14〜28g)。他の油やバターからの置き換えで総カロリー調整を。
- 保存方法と“いつまで”使える?
- 遮光瓶×涼しい暗所(15〜20℃)で保管。開封後は2〜3か月を目安に使い切り。小瓶を回転よく。
- 冷蔵庫に入れると白く固まる…問題ある?
- 正常。低温で濁り・結晶が出るが、常温で元通り。出し入れの結露は酸化を招くため、暑い時期のみ冷蔵を。
- 本物の見分け方は?
- 収穫年/搾油年、原産国・生産者、ロット、認証(DOP/PGI等)など情報の透明性を確認。試飲できるならフルーティー・苦味・辛味の三位一体をチェック。
- ピュア/バージンとの違いを一言で?
- EVOO=香りと個性を楽しむトップ等級。ピュア=精製油がベースのマイルド派。バージン=EVOO未満だが機械搾りの仲間。生食はEVOO、高温はピュア。
- 子どもや妊娠中でも大丈夫?
- 一般的な食用油として通常量なら可。持病・治療中は医療者に相談。幼児は量を控えめに。
- 価格差はなぜ大きい?
- 早摘み・手摘み・小規模生産・温度管理・遮光容器など、手間と歩留まりの差が価格に反映。高価=必ずしも“好み”ではないため、用途と味の好みで選ぶ。
- スキンケアに塗ってもいい?
- 食用グレードでも可だがパッチテスト推奨。べたつきやすい肌は夜だけ・少量で。古い油は肌用途でもNG。
このブロックの要点
・「エクストラバージンとは」=最上位の機械搾り&欠陥なし&酸度0.8%以下。
・風味や保存は鮮度・温度・光・空気の管理がすべて。
・使い方は生+中火+追いオイルが鉄板。